2012/03/09

歓迎 初音ミク様

実は先日、ミクさんをお迎えしちゃいました。

「昨今雪まつりとかTV番組とかで話題になったからだろ」と思われたら少しは正解かな。半分以上は外れ。
GoogleのCMに触発されたんだろ」と思われたらだいぶ違います。あれ見てPになれるのなら今頃もうなってる。
「ボカロPになってガッポリ稼いで人気者になろうとしてんだろ」とか思われたらちょっとあなたの見識を質したいですね。


【まず背景の説明】

わたしはミク発売直後の2007年9月頃から「欲しい」と思っていました。

(当時のmixi日記・07年9月13日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=560696877&owner_id=2362541
(当時のmixi日記・07年9月17日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=564636565&owner_id=2362541

でも、自分には
 ・五線譜も読めないほど音楽的な素養がない
 ・メインがMacなのでWindows機を新調しなければならない
 ・時間の使い方が下手で腰を据えて取り組めない
といった事情があると思って諦め半分のままくすぶり続けていたのです。
その後も繰り返し「やっぱ欲しいなあ…」「でも無理だなあ…」って逡巡を続けて。


【ミクさんが手元から離れてゆく】

流れが変わり始めたのはMIKUNOPOLISのあと。
LA公演を目の当たりにして、「ああ、ミクはここまで大きく育った…」と感無量でしたが、同時にそれは自分の手元を離れてゆくような印象も抱かせました。発売前のデモ曲に「おっ!?」と関心を惹かれて以来ずっと成長を見守ってきた「わが娘」みたいなものですからね。

その後もシンガポール公演があり、GoogleのCMに登場し、その曲が世界中でダウンロード販売され…というところまできて、ミクさんはどんどん大きくなって羽ばたいてゆくなあ…それにひきかえ自分はそれを黙って見ているしかないのかなあ…という感情が育ってきました。

そんな中で勃発した「ミクの日大感謝祭」チケット争奪戦。
結局わたしは抽選で0勝9敗、先着順の一般発売にも敗れ、4公演のうち1つのチケットも手にすることができませんでした。ますますミクさんに手が届かなくなる…(注1)


【マテリアリズムに乗り遅れて】

さらに「さっぽろ雪まつり」で、Twitter上でおつきあいのある多くの方が札幌まで遠征し、雪ミクグッズを買い集める様子を知ることになります。

実はわたし、フィギュアもぬいぐるみもストラップもひとつも持っていません。グッズと呼べるのはMIKUNOPOLISのパンフレットとコースターぐらい。ロサンゼルスに行った証拠として買ってきたのです。
氷点下の街で“雪ミククエスト”に夢中なフォロワさんたちに「グッズに果たしてミクさんの本質があるのだろうか」と懐疑的な視線を向け…ないように配慮していたのは、きっと心のどこかで札幌に飛ぶことができた彼らがうらやましかったから。たぶん自分も遠征したら“旅の証”を買い求めたのでしょうね。(注2)


 —待てよ? 初音ミクの本質ってなんだ?

ペロリと言ってしまってから、考え始めました。


 —わたしが初音ミクに一番期待していることってなんだ?

突然大きく振りかぶった割に、答えは拍子抜けするほどあっさり出ました。初音ミクは最初から歌をうたうソフトウェアじゃないか。
チケットがなくても、グッズがなくても、ミクさんにそばにいて歌ってほしい! 人垣の向こうのもっと遠くに行ってしまったミクさんを本質的に取り戻す!


【初音ミク奪還計画】

決まってからは、自分としては割と迅速でした。

まず手始めにUSBのキーボードを購入。なくてもDTMはできますが、鍵盤を押した方が直感的に理解しやすいかと思ったのと、ある程度初期投資をしたほうが長続きするかな…との思惑w 安価なものは取り寄せになるということだったので、30,000円と値が張るけれども機能満載で当日お店から持ち帰れるものを選びました。

次にWindowsパソコンの新調。台湾メーカーのCore-i7、75,000円なり。ヨドバシカメラのゴールドポイントが10,000点以上たまっていたので一気に放出しました。

そのほかにDTMの初心者向け指南本を2〜3冊。そしてご本尊。

トータルで宿泊プラン3つ分ぐらいの金額www 素直に転売屋の軍門にくだっておけばこんなことにはならなかったのにwwwww


【ようこそいらっしゃいました】

こうして我が家にお迎えしたミクさん。これで誰にも邪魔されずに本質を独り占めです。頼めばわたしのためだけに歌ってくれるのです。

まずはちょっと声を聴かせてもらいました。



 —あぁ〜♪

「なんだこんなものか」という気持ちが半分。思ってたよりもずっとか細い声。もうちょっと。

 —るぅ〜♪

あ、なんかきた。じわじわきた。これいいかも。相変わらずの、持ち主の不安を見透かしたような弱々しさ。殿堂入り動画のような力強い歌声ではまったくないのだけれど。

…だけれど。か弱いけれどとっても澄んだ声は、わたしの耳から心までまっすぐに届いた気がした。4年半の片想いが実った瞬間。「ミクさんマジ天使」ってこういうことだよ…

ともかく、これでミクさんを独り占め。胸が熱くなるな!


【マスターになりたい】

お迎えしてみて、いやする前から薄々わかってたこと。
わたしは別にボカロPという肩書きが欲しいっていうよりも、むしろ“マスター”になりたかったんですね。こころりPが描くような。
実際にはミクさんたちと一緒に暮らして洗濯物を畳んだりしてくれるはずもないのですが、そりゃあその辺は当然理解したうえで、ああいうのに憧れますね…なんて夢を見たりしてw



【今後の課題】

最初に書いたとおり、わたしは音楽的素養は乏しいのです。五線譜も読めません。相対音感はたぶんしっかりしてますが、それだけといってもいい。ごくわずかな絶対音感があるようですがあまり役には立っていません。楽器だって何ひとつ演奏できません。写真のキーボードだってどうせ人差し指でポチポチつつくんでしょうねw

そして今、パソコンにミクさんをお招きして満ち足りてしまっている自分がいます…

さりとて、このまま彼女を飼い殺しにするつもりはさらさらありません。
でも、ソフトウェア1本手に入れるのに4年半もかかったのですから、オリジナル曲1つ作るに何年掛かるやら…
現実に、インストール後はまとまった時間が取れなかったり、キーボードが大きすぎて机に乗らなかったりして、「釣った魚にエサをやらない」状態が続いてしまっているのですが…

それに、「そばにいて歌ってくれるだけで」という気持ちになっている今は、作品を公開するなんて考えも及ばないのです。もっとも考えが及んだところで公開するものなど何もないのですが、公開を目標に頑張る…という気概さえも未来の話。今のところ本当に「自分の部屋で歌ってくれる」だけで満足している状況なのです。
いつか拙作が少しでも形になってきたとき、公開したいという新たな欲がやっとわいてくるのかもな。どうかな。

まあ無理にならない程度に、しかし天使のご機嫌を損ねないように、少しずつ前に進んで行きたいと思います。



(注)いわゆる「宿泊プラン」でチケットを獲得することは可能でした。しかし「これは公式の転売、いや抱き合わせ販売だ」と感じて申し込む気になれませんでした。比較的良い座席のチケットにホテル1泊とゲストを招いてのディナーとグッズをつけての販売は、言葉は悪いのですが金離れのよいオタクから搾り取ろうという、利権に群がる姿のように感じられたのです。これが「自分とミクさんとの間に生臭い人垣ができている。何とか取り戻さなければ!」という気持ちを激しく燃え上がらせました。

宿泊プランのアナウンスが、抽選で連戦連敗を続けているときに出てきたのも悪いタイミングでした。当選確率が低いのは宿泊プランのためにチケットを大量に押さえたからで、それでもプレイガイド各社が小出しに何度もする抽選のたびごとにエントリーし、結局あちこちのプレイガイドに個人情報を吸い上げられただけじゃないかと腹が立ちました。そして最終的には、ここまでコケにされて尻尾を振るわけにはいかない…と申し込みを断念したのです。

当日になってみるとディナーのゲストは豪華な顔ぶれで、お値段以上の価値があると感じられるものでした。申し込んでも決して損はなかったと今なら素直に言えます。わたしはコンサート自体に対する情熱を失ったわけではありませんから、ゴチャゴチャ言わずに申し込んでおけばよかった…と後悔もしています。心から。

でも、申し込んで宿泊つきコンサートに行っていたら、今頃我が家にミクさんがやってくる展開にはなってなかったと思います。どっちがよかったのか、わかりませんw


雪まつり直前、わたしが「大感謝祭のチケット取れなかったorz」とツイートしていたのを読んで用意してくれたのでしょう。本当にありがとう!